世界クラシックパワーリフティング選手権大会へ向けた準備と結果

今年6月に行われた世界クラシックパワーリフティング選手権大会に向けたピーキングの様子や取り組んでいた種目について振り返って行こうと思います。

世界大会の様子やピーキング内容などが少しでもお届けできればと思っております。

ピーキング時期について

今年の世界クラシックは、南アフリカのサンシティで行われました。

日程は6月5日〜11日までです。

軽量級からスタートし、後半につれ重量級になっていくというタイムスケジュールです。

私は105kg級なので、10日が試合日となっていました。

試合へ向けたピーキングを考える時に大切な事は、「何週間でピークを作れるか」という事です。ここを外してしまうと、大会で良い結果が出る事はありません。

正確に何週間でピークが来るのか?という事は多くのパワーリフターが悩む項目の一つかと思いますが、私の回答としては「個人差があるので何度もトライする事」となります。

どういう事かというと、人によっては3週間でピークが来る人もいますし5週間で来る人もいます。従って、一律に〇〇週間が最適なピーキング期間!という事は出来ないのです。

では、どのようにして自分に最適なピーキング期間を導き出すのか?

それは、5〜9週間程度の長めのトレーニングブロックを数回実施し、自分の推定MAXの変動がどの様に推移するのかを見ていくと傾向が掴めます。

その傾向を元に、何週間でピークが来やすいのかを判断し、大切な試合やMAX測定へ向けた時に実施する様にします。私の場合は、現在4週間でピークが来る事が分かっているので、今回の世界大会でも4週間のピーキングブロックを設定し実施しました。

読者の皆さんも大会などを見据えて、上記の様に何週間でピークが来るのか?といった視点を持ちながら練習されるととても有益だと思いますので、ぜひお試しください。

ピーキングブロックと目標値

今回のピーキングブロックは上記の通り4週間でした。

そこに試合前の最終調整週を1週間程入れて、合計で5週間のブロックになります。

最終調整では、実際の大会試技を想定してコスチュームやw-up、インターバルなどを揃えて練習します。私の場合は主に第1試技と第2試技の想定重量を各1回のみ持ちます。

ここではピーキングで出力がしっかりと上がって来ているか、疲労が抜け切っていない状態でどこまで出力が発揮出来ているか、といった点を主に確認します。

想定よりもやや挙がりが渋い時もありますが、その時の疲労度を考えて実際の試合で想定重量の設定を修正するのかどうか判断します。

今回の世界クラシックでの3種目の目標値は

スクワット:315kg

ベンチプレス:195kg

デッドリフト:290kg

トータル:800kg

としていました。

世界大会前の各種目やトータルのベストは

スクワット:300kg

ベンチプレス:192.5kg

デッドリフト:285kg

トータル:770kg

でした。

今回は、全種目でベストの更新と日本人で数名しか達成していないトータル800kg、そしてスクワットのアジア記録更新を目標にして臨みました。

特に、スクワットのアジア記録315kgは何としても達成したい目標として設定していました。では、次に実際にその為に行っていた練習内容に触れて行こうと思います。

主に取り組んだ種目など

今回のブロックサイクルは、週5回のトレーニングで

月:スクワット、ベンチプレス

火:ベンチプレス

水:OFF

木:デッドリフト、スクワット

金:ベンチプレス、デッドリフト

土:ベンチプレス

日:OFF

といったサイクルです。

スクワット週2回、ベンチプレス週4回、デッドリフト週2回、オフ2日という内訳になります。

非常にボリュームが多いですが、まずBIG3はメイン種目とサブの種目といった形で実施の優先順位が決まります。

月曜日の例で言えば、スクワットがメイン種目、ベンチプレスがサブ種目です。

そこにアクセサリーの補助種目を各日で行う流れです。

私の場合は、クラシカルにメインの日=重い日、サブ種目=軽い日といった形で組み合わせてサイクルを組み立てています。

メニューの組み方などは専門的になって来ますので今回は敢えて触れませんが、今後ブログやYoutubeでも発信していきますので、ぜひお楽しみにしていてください。

今回目標達成の為に力を入れて取り組んだ種目はセーフティスクワットバースクワット(以下SSB-SQ)とヒップエクステンションです。


SSB-SQは上の写真の様な特殊バー(Americanbarbell製)を使用して行うスクワットです。

通常のシャフトとは異なり、プレートがやや前方に位置しているのが特徴です。

重心位置が前方になる事で大腿四頭筋に対する刺激が増す事の利点がよく言われるのですが、私の狙いは別にあります。

私がSSB-SQをする目的は、「体幹部の強化」が第一になります。

SSB-SQは、特に後ろから常に押される様に負荷がかかるので、前に倒れない様に身体をキープしなくてはいけないのですがその特に腰ではなく体幹部で上体や姿勢が崩れない様に我慢しながら動作を行えるなると、通常のスクワット動作、特に高重量での動作時に上半身が重さに負けて潰れしまうという事を防げます。

私も300kg付近の高重量帯になると、体幹部の弱さが出るので非常に良い補強トレーニングになっています。今後も継続して行うおすすめ種目の一つです。

ヒップエクステンションは上の写真の様な種目です。

GHD(グルートハムデベロッパー)(Americanbarbell製)もしくはハイパーエクステンションというマシンを使用して行います。重力の方向などから、GHDの方がよく効くので個人的にはおすすめです。

股関節を支点に、大臀筋とハムストリングスの収縮を利用し身体を引き上げる種目です。

よく腰を支点にするバックエクステンションと混同している方もいますが、明確に動きと鍛える目的、部位を分けて取り組んでいく事が大切だと思います。

GHDヒップエクステンションは、デッドリフトの強化目的で世界大会前から特に力を入れ始めた種目です。デッドリフトの1st pullでの骨盤と体幹部の保持、2nd pullでの強いヒップヒンジ動作の確立に必要不可欠な動きだと考えています。

やってみると分かりますが、大臀筋とハムストリングスの収縮で身体を引き上げようとすると体幹部のキープをかなり意識しないと腰を反ってしまい、バックエクステンションになってしまいます。その辺りの固定と可動の感覚の使い分けを養う為にも非常におすすめです。

写真は120kgのプレートを持って10回5セット実施した時の物です。

デッドリフトの記録が伸び悩んでいる方はぜひフォームに気をつけながら実施してみてください。

その他には前腕強化としてスイスマルチグリップバーを使ったハンマーカールや、ナローベンチプレス、スリングショットなども適宜実施しました。

どれもベンチプレス動作を安定させる為に大切な筋肉を効率よく鍛えられるのでおすすめです。特にスリングショットは使う目的によっても色々と効果を引き出せるので、上手く活用できると停滞打破に役立つと思います。

たまにおまけでやるトップサイドのヘックスバーDL(450kg)

刺激入れと僧帽筋のトレーニングです。(*無理のない重量をおすすめします。)

世界大会での交流

世界大会では世界各国のトップ選手が集まります。

私は今回が初の世界大会出場だったので、世界のトップ選手がどのように練習や試合をしたり、生活をしてリズムを作っているのか、自分との体格差などを実際に直近で見る事が出来ると思いとても楽しみにしていました。

上の写真は世界のレジェンドリフターであるDavid Ricksです。(世界大会優勝11回)

60代にして300kg以上のスクワットやデッドリフトをするレジェンド中のレジェンドです。

稀な存在ではあると思いますが、自分も年齢を重ねても強くあり続けたいと感じさせて頂きました。

とても気さくで写真撮影もノリノリで応じてくれた良い人です!

上の写真は今大会93kg級で優勝したChance Mitchell選手。

彼はInstagramの投稿にたまに反応してくれていたので、少しでも話ができればいいなと思っていましたが、彼の方からとてもフレンドリーに話しかけに来てくれました。

英語がそこまで得意ではないので、細かい技術的な事やトレーニングの事を聞けなかったのが残念でなりませんでした、、、。来年の世界大会ではもう少しコミュニケーションが取れるところまで勉強しようと思いました。

また、彼と話したり身体に触れた印象として、身体の引き締まりや筋肉量の多さに驚きました。黒人特有の筋肉のつき方など遺伝的差はあれど、まだまだフィジカルで圧倒的に負けているんだなと痛感させられたので、帰国後は徹底してフィジカル強化が必要だと一緒に写真に写っている鶴谷選手(93kg級日本代表)とも話していました。

その他にも色々な国の選手と交流が持てた経験は今後の競技人生、トレーナー人生に大きなプラスになりました。今後も国際大会へ出場し、多くの経験をしていきたいと強く思えた瞬間でもありました。

試合結果

試合結果は以下の通りとなりました。

スクワット:290kg

ベンチプレス:187.5kg

デッドリフト:275kg

トータル:752.5kg

目標としていた数値には届きませんでしたが、現地入りした後も大変好調でおそらく過去一番の調子だったと思います。

上記の数値は全て第2試技の重量になります。

第3試技は全てベストにチャレンジしましたが、残念ながら全て跳ね返される結果となりました。ですが、スクワットの315kg(アジア記録)への挑戦とデッドリフト300kgへの挑戦が世界大会という最高の舞台で出来た事は自分としては悔いがなく、とても良かったです。

世界の舞台でチャレンジしたからこそ感じた事、成功させる為に必要な要素など、かけがえの無い経験を得ました。その経験を糧に、次こそはアジア記録を塗り替えられるように現在練習に励んでいます。

まとめ

いかがだったでしょうか?

今回の世界大会へ向けたピーキングや取り組んだ種目など、少しでも読者の皆さんのお役に立てていれば幸いです。

最後に、世界大会出場にあたり多くの方にご声援やメッセージ、ご支援を頂きました。

改めて、とても力になりました!ありがとうございました!

引き続き頑張って参りますので、今後もご声援頂ければ嬉しいです!

また、日本代表メンバー皆んな仲良くとても楽しかったです!

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